設備の「減肉」とは?摩耗・腐食との関係
設備トラブルの原因として「減肉」という言葉が使われることがあります。
減肉とは、摩耗や腐食などによって材料が徐々に失われ、設備の肉厚が薄くなる現象を指します。主に配管やボイラー設備などで問題となる現象です。
摩耗や腐食は損傷の原因を示す言葉であるのに対し、減肉はそれらの結果として生じる状態を表す言葉です。
例えば以下のような現象が減肉の原因となります。
- 固体粒子によるアブレシブ摩耗
- 流体によるエロージョン
- 腐食環境による材料の溶解
減肉が進行すると、設備の強度低下や漏洩、破損につながるため、早期の対策が重要になります。
設備の寿命を縮める「摩耗」の主な種類と原因
摩耗はトライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑の学問)において、主に凝着摩耗・アブレシブ摩耗・腐食摩耗・疲労摩耗の4つに分類されます。特にプラント設備では、摩耗が減肉の主な原因となります。
本ページでは、現場での発生頻度や設備への影響を踏まえ、代表的な摩耗形態から順に解説します。
アブレシブ摩耗(引っかき摩耗・土砂摩耗)
砂や鉱石、金属粉などの硬い粒子や突起が、設備の表面を引っかいて削り取る現象です。摩耗のメカニズムによって、大きく2つのパターンに分類されます。
二元摩耗: 硬い材料の表面にある突起が、直接擦れ合って柔らかい相手側の材料を削り取る状態。
三元摩耗: 摺動する部品と部品の間に、砂や鉱石、硬化した削りカスなどの「硬い固形粒子」が入り込み、ヤスリのように表面を削り取る状態。
発生しやすい設備: セメント工場の粉砕機(竪型ミルなど)、鉱山設備、搬送シュート、スクリューコンベアなど
特徴: 特に竪型ミルなどの粉砕設備では「三元摩耗」が絶えず発生するため、摩耗の進行(減肉)が非常に激しいのが特徴です。粉砕プロセスにおいて固形粒子(原料)を取り除くことはできないため、「対象の粒子よりも硬く、耐摩耗性に優れた合金(高クロム系材料など)を表面に肉盛溶接することが、非常に有効な対策となります。
凝着摩耗(焼き付き)
金属同士が接触して滑り合う際、摩擦熱と圧力により表面の微小な凸部同士がくっつき(凝着)、それが引き剥がされることで材料がむしり取られる現象です。特に潤滑不足や同種材料の組み合わせにおいて発生しやすい特徴があります。
発生しやすい設備: 軸受(ベアリング)、金属同士が強く擦れ合う摺動部など
特徴: 同じ金属同士で起こりやすく、重度になると設備が急停止する原因となります。
腐食摩耗(化学摩耗)
水分、酸、アルカリなどの化学的作用(腐食/コロージョン)と、摩擦などの機械的作用が同時に作用することで進行する摩耗です。
腐食によって生成された表面層が機械的作用によって除去され、常に新しい金属表面が腐食環境にさらされることで、損耗が繰り返し加速します。
発生しやすい設備: 製紙工場のパルプ処理設備、化学プラント、バイオマス発電所のボイラー内部など
特徴: 表面に形成された腐食層(サビなど)が摩擦で除去され続けるため、単なる摩耗や腐食に比べて損傷の進行が速く、減肉が急速に進行する傾向があります。
疲労摩耗
接触面に繰り返しの荷重が作用することで、材料の表面や内部に微小な亀裂(クラック)が発生し、その進展によって最終的に表面がウロコ状に剥離する現象です。
発生しやすい設備: ギア(歯車)、ローラー、軌道輪(ベアリング部品)など
特徴: 表面がウロコ状に剥がれる「フレーキング」や、小さな穴が発生する「ピッチング」と呼ばれる特有の損傷形態を示します。
複合的な摩耗現象:エロージョン(浸食摩耗)
液体や気体中に含まれる微小な固体粒子が、設備の表面に高速で衝突し続けることで削り取られる現象です。
アブレシブ摩耗や疲労摩耗が複合的に作用することで進行します。配管やボイラー管における減肉の主な原因の一つであり、設備損傷につながります。
発生しやすい設備: ボイラーのチューブ、ポンプの羽根車、配管の曲がり角(エルボ)、誘引ファンなど
適切な摩耗対策・腐食対策を行うためには、まず現場の設備で「どのメカニズムの摩耗が起きているか」を正しく特定することが不可欠です。
摩耗・腐食・減肉に対する主な対策方法
摩耗・腐食・減肉の進行を抑えるためには、設備の状態や使用環境に応じて適切な対策方法を選定することが重要です。
ここでは、現場で多く採用されている代表的な対策方法を紹介します。
1. 肉盛溶接(補修溶接)
摩耗や腐食が進行した部分に、耐摩耗性・耐食性に優れた合金を肉盛し、部品の形状や強度を再生する方法です。
摩耗対策・減肉対策の中でも、適用範囲が広く、多くの設備で採用されている方法です。
肉盛溶接の特徴:
- mm単位で十分な膜厚を確保でき、重度の減肉にも対応可能
- 基材と冶金的に結合するため、剥離しにくく高荷重環境に強い
- 必要な箇所だけ部分補修ができ、大型部品の延命に特に有効
高クロム系・ニッケル系・コバルト系などの合金を用いることで、摩耗対策・腐食対策の両面で高い効果が得られます。
詳しくは、肉盛溶接の紹介ページをご覧ください。
2. 表面処理(コーティング)
表面処理は、摩耗や腐食を軽減するために金属表面へ薄膜を形成する方法で、μm単位の処理が可能なため、寸法精度が求められる小型部品にも適しています。
代表的な表面処理には以下のようなものがあります。
耐摩耗系:窒化処理、浸炭処理、HVOF溶射・プラズマ溶射など
耐食系:溶融亜鉛めっき、フッ素樹脂コーティング など
表面処理の特徴:
- 薄膜処理により、精密部品でも寸法精度を維持しやすい
- 基材の強度を保ったまま、表面の耐摩耗性・耐食性を向上できる
- ただし、膜厚が薄いため、高荷重・衝撃部位では剥離リスクがある
大型設備や高荷重部品では、表面処理よりも肉盛溶接の方が適している場合が多く、摩耗・腐食の程度に応じて使い分けが必要です。
3. 材質変更(高耐摩耗・高耐食合金への置換)
摩耗・腐食環境が特に厳しい場合、母材そのものを耐摩耗・耐食材料に変更することで、大幅な寿命向上が期待できます。
よく選定される材料例:
- 高クロム鋳鉄(耐摩耗鋳造)
- Ni基・Co基耐熱耐食合金(化学プラントや高温環境向け)
- ステンレス鋼(SUS304, SUS316 など)
- セラミック複合材料(超硬合金, WCコーティング)
当社では、用途に応じた材質変更を含めた鋳造品の手配も可能です。
4. 部品の設計変更(摩耗・腐食を抑える工夫)
摩耗や腐食を抑えるために、部品の形状や構造を見直すことも重要です。例えば、以下のような設計変更が考えられます。
代表的な設計改善例:
- 摩耗しやすい部位に硬化肉盛溶接を組み込んだ構造に変更する
- 摩耗・腐食部を交換式ライナー構造に変更し、メンテナンス性を向上
- 流体侵入角度や衝突面を最適化し、摩耗・腐食を軽減
- 摩擦が発生しやすい部分に異種材料(樹脂・セラミック)を組み合わせる
新規設計の段階で「摩耗対策・腐食対策」を組み込み、故障リスクそのものを下げることができます。当社では、単なる補修だけでなく、摩耗の根本原因を分析し、こうした『摩耗に強い形状への設計変更』や『最適なライナーへの交換』も含めたトータルな延命提案が可能です。
5. 運用条件(荷重・流体)の分析と対策
摩耗や腐食の進行は、「運用条件の変化」によって急激に進むことがあります。
- 荷重・速度の調整:過負荷運転は摩耗を加速
- 異物混入の管理:砂・金属片・腐食性物質が摩耗・腐食の大きな原因
- 環境条件(温度・湿度・化学成分)に応じた適切な材料選定
- 場合によっては、流れ方向の最適化や滞留の改善で摩耗が大きく低減する
設備全体の条件を分析することで、摩耗対策・腐食対策の効果をさらに高めることができます。
摩耗・腐食対策の施工事例
摩耗・腐食・減肉は、設備の種類や使用環境によって発生の仕方や適した対策が異なります。
ウェルディングアロイズ・ジャパンでは、各業界の設備条件に合わせた肉盛溶接や表面改質による設備延命対策を行っています。
以下では、業界ごとの代表的な対策事例をご紹介します。
最適な対策方法をご提案します
当社では、肉盛溶接による補修・再生や、新規製作時の耐摩耗・耐食肉盛、材質変更を含めた鋳造品の手配、耐摩耗ライナーや交換部品・プロテクターの製作を行っています。
運用条件に応じた最適な対策をご提案可能ですので、お気軽にご相談ください。
