摩耗・腐食・減肉の対策
設備の摩耗・腐食・減肉は、運転条件や使用環境によって必ず発生する劣化現象です。
しかし、適切な対策を行うことで、部品交換の頻度を減らし、設備寿命を大幅に延ばすことが可能です。
摩耗・腐食・減肉の進行原因は設備によって異なりますが、主な対策は「肉盛溶接」「表面処理」「材質変更」「設計変更」「運用条件の見直し」の5つに整理できます。
本ページでは、それぞれの対策がどのような場面に適しているのか、またどのような設備に効果を発揮するのかをわかりやすく解説します。
当社では、肉盛溶接を中心に、用途に応じた材質変更や鋳造品の製作、耐摩耗ライナー・補修部品の製作など、お客様の設備環境に合わせた最適な対策をご提案しています。
「どの対策が自社設備に合うのか知りたい」
「交換ではなく補修で延命したい」
という方に役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
1. 肉盛溶接(補修溶接)
摩耗や腐食が進行した部分に、耐摩耗性・耐食性に優れた合金を肉盛し、部品の形状や強度を再生する方法です。
摩耗対策・減肉対策の中でも、最も適用範囲が広く、効果が高い方法と言えます。
肉盛溶接の特徴:
- mm単位で十分な膜厚を確保でき、重度の減肉にも対応可能
- 基材と冶金的に結合するため、剥離しにくく高荷重環境に強い
- 必要な箇所だけ部分補修ができ、大型部品の延命に特に有効
高クロム系・ニッケル系・コバルト系などの合金を用いることで、摩耗対策・腐食対策の両面で高い効果が得られます。
詳しくは、肉盛溶接の紹介ページをご覧ください。
2. 表面処理(コーティング)
表面処理は、摩耗や腐食を軽減するために金属表面へ薄膜を形成する方法で、μm単位の処理が可能なため、寸法精度が求められる小型部品にも適しています。
代表的な表面処理には以下のようなものがあります。
耐摩耗系:窒化処理、浸炭処理、HVOF溶射・プラズマ溶射など
耐食系:溶融亜鉛めっき、フッ素樹脂コーティング など
表面処理の特徴:
- 薄膜処理により、精密部品でも寸法精度を維持しやすい
- 基材の強度を保ったまま、表面の耐摩耗性・耐食性を向上できる
- ただし、膜厚が薄いため、高荷重・衝撃部位では剥離リスクがある
大型設備や高荷重部品では、表面処理よりも肉盛溶接の方が適している場合が多く、
摩耗・腐食の程度に応じて使い分けが必要です。
3. 材質変更(高耐摩耗・高耐食合金への置換)
摩耗・腐食環境が特に厳しい場合、母材そのものを耐摩耗・耐食材料に変更することで、大幅な寿命向上が期待できます。
よく選定される材料例:
- 高クロム鋳鉄(耐摩耗鋳造)
- Ni基・Co基耐熱耐食合金(化学プラントや高温環境向け)
- ステンレス鋼(SUS304, SUS316 など)
- セラミック複合材料(超硬合金, WCコーティング)
当社では、用途に応じた材質変更を含めた鋳造品の手配も可能です。
4. 部品の設計変更(摩耗・腐食を抑える工夫)
摩耗や腐食を抑えるために、部品の形状や構造を見直すことも重要です。例えば、以下のような設計変更が考えられます。
代表的な設計改善例:
- 摩耗しやすい部位に硬化肉盛溶接を組み込んだ構造に変更する
- 摩耗・腐食部を交換式ライナー構造に変更し、メンテナンス性を向上
- 流体侵入角度や衝突面を最適化し、摩耗・腐食を軽減
- 摩擦が発生しやすい部分に異種材料(樹脂・セラミック)を組み合わせる
新規設計の段階で「摩耗対策・腐食対策」を組み込み、故障リスクそのものを下げることができます。
5. 運用条件の見直し
摩耗や腐食の進行は、「運用条件の変化」によって急激に進むことがあります。
- 荷重・速度の調整:過負荷運転は摩耗を加速
- 異物混入の管理:砂・金属片・腐食性物質が摩耗・腐食の大きな原因
- 環境条件(温度・湿度・化学成分)に応じた適切な材料選定
- 場合によっては、流れ方向の最適化や滞留の改善で摩耗が大きく低減する
設備全体の条件を分析することで、摩耗対策・腐食対策の効果をさらに高めることができます。
最適な対策方法をご提案します
当社では、肉盛溶接による補修・再生や、新規製作時の耐摩耗・耐食肉盛、材質変更を含めた鋳造品の手配、耐摩耗ライナーや交換部品・プロテクターの製作を行っています。
運用条件に応じた最適な対策をご提案可能ですので、お気軽にご相談ください。
