「スマートウェルディング®」のビジョン
溶接業界は現在でも職人の技能に頼る部分が大きく、特に現場での完全な無人化は困難と言われています。そのため、このような事業は代表的な3K(汚い、危険、きつい)業種であり、製品の品質にばらつきが起きやすいことや、作業者の肉体的・精神的負担が大きいといった課題が挙げられます。
施工品質を向上するためには、溶接の自動化による安定化はもちろん、準備項目である素材の分析や溶接材料の選定から施工前後の表面処理や検査・計測など、改善すべき要素は多岐に渡ります。これら全ての要素に対して幅広く、新たな装置やシステムを導入して改善し続けることで製品品質の向上や、作業の安全性を高めることができると考えています。
そのため、当社が提唱する「スマートウェルディング®」とは、溶接施工全体のすべてを最適化することを示しています。

自動溶接装置
自動溶接装置 WAMS
WAMSシステムは、当社の自動肉盛溶接の制御システムであり、Welding Alloysグループにて開発されています。第2世代からは、現地施工型と工場設置型に分類され、現在は第3世代まで開発が進んでいます。


次世代自動溶接装置 Simple
Simpleシステムは、国内のニーズに合わせて開発され、レーザー計測器などの各種センサーとの連動や、PCによる複数装置の遠隔操作を可能にするなど、自社で機能を拡張し、進化させるための新たな溶接制御システムです。
WAMSをベースにした第1世代と、小型軽量化した第2世代を開発し、自動肉盛溶接に採用しています。また、非接触センサーを用いてスクリュの羽根に倣って動作するSimple-Screw、ロボット溶接システムと連動するSimple-Robotなど、機能拡張版もあります。


ボイラ火炉壁溶接装置 SPW
SPW(Smart Panel Welder)は、ボイラ火炉壁パネルの自動溶接用に国内で開発したシステムです。自動化を重視した工場設置型と、可搬性を重視した現地施工型の2種類があり、それぞれパネルの自動肉盛溶接に幅広く活用されています。
また、国産の半自動溶接機の機能を活かしているため、職人による半自動溶接への切り替えもスムーズに行えます。

肉盛溶接模式図

管外面溶接装置
ボイラ火炉におけるスクリーン管や各種ノズルなど、設備内の摩耗しやすい管の耐腐食・耐摩耗性を向上させるため、管の外面に肉盛溶接を施す装置を社内で開発し、施工に活用しています。また、溶接後の肉盛管には曲げ加工を施すことも可能です。なお、本方式の冷却方法について特許を取得済みです。


ボイラ火炉壁用パネル隅肉溶接装置
当社工場では、小ロットの新品ボイラ火炉壁パネルの製作に対応するため、隅肉溶接装置を開発しました。管の両側の隅肉を同時に溶接するため、溶接後の変形を抑えることができます。


自動除去加工装置
汎用グラインダ自動研削機
溶接による補修施工では、対象表面が劣化・腐食していることが多く、清浄化が必要になります。清浄化にはブラスト加工や化学洗浄などの方法もありますが、手軽なグラインダやサンダーといった電動工具による研削作業が一般的です。しかし、研削作業は作業者の負担が大きく、代表的な労災リスクの一つでもあります。
当社では、設備に合わせた研削装置を開発し、作業の安全性向上に取り組んでいます。


ボイラ用タンデム研削装置
肉盛溶接前には、表面の劣化層を除去する必要があります。しかし、ボイラパネルの管のR面では、ディスクグラインダーによる研削が困難であり、削りすぎや砥石の弾かれによる危険も伴います。
タンデム研削は、回転方向が異なる2本の砥石を左右一対で動作させることで、互いの反力を相殺し、安定した研削を可能にする特許技術です。特に、手作業が困難な管の両側面の研削におけるリスクを低減できます。また、手作業に応用することで、研削時の安定性も向上します。


自動ガウジングシステム
竪型ミルなどの設備では、硬化肉盛溶接による再生を繰り返し行うことが可能ですが、再生を重ねることで古い硬化層が劣化することがあります。この場合、劣化した硬化肉盛層をガウジング(アークやエアを用いた溶接金属の除去作業)で除去する必要があります。当社では、肉盛溶接と同様にガウジングも自動化し、効率的に施工を行っています。また、本システムは現地施工にも対応しています。


各種計測・診断
断面形状計測システム
竪型ミルの現地施工において、肉盛溶接前後のテーブルライナの形状を可視化するため、「パンチルトレーザー計測システム」を社内で開発しました。
非接触のレーザー変位計を制御することで、ローラやテーブルライナの周方向の高低差、および径方向の表面形状を計測することで、より正確な現地施工が可能となります。


ゲージセンサ計測システム
竪型ミルの肉盛溶接前には、表面の凹凸を計測するためにレーザー計測システムを採用しています。従来のシステムでも計測は可能ですが、回転方向の凹凸を計測する場合は計測点の数だけ設備を周回する必要があり、大型設備ほど計測に時間がかかるという課題がありました。
本計測システムでは、機能を限定しつつ8台のレーザーヘッドを搭載することで、複数の計測点を同時に測定できるようになりました。さらに、計測時にPCを使用しないため、誰でも簡単に操作できるのも特長です。


ラインレーザー計測システム
本システムは、一直線上に照射されるレーザーを用いて、直線上の形状をワンタッチかつリアルタイムに計測できるシステムです。さまざまな製品の形状計測に活用されており、肉盛溶接による形状復元においても、新たな非接触形状計測方法として導入しています。


3Dカメラの活用による形状計測
減肉した部品の計測は非常に困難です。特に、部品サイズが大型になると作業性が悪くなり、計測器の制限もあるため、計測が難航します。当社では、3Dカメラを採用することでこの問題を解決し、正確なデータを基に最適な肉盛溶接補修を実現しています。


ワイドエリア三次元測定機
株式会社キーエンスより導入した三次元測定機により、竪型ミルのローラやテーブルライナなどの大型製品の精密な形状計測が可能になりました。3D CADとの連携により、摩耗した製品の形状を計測し、設計寸法との差異を確認できます。また、製缶品のより正確な計測も可能となりました。


連続超音波厚さ計測装置 Boi-Runner
Boi-Runnerは、ローラー型の超音波探触子をボイラパネルに沿って走査し、管の肉厚を連続的に計測できる装置です。ローラー型の超音波探触子とリニアエンコーダを連動させることで、一直線上の厚さを測定すると同時に、計測位置を記録してデータ出力が可能です。
ボイラ水冷壁パネルでは、管の厚さが法律で定められた最小肉厚を下回らないよう、適切なメンテナンスが求められます。肉盛溶接の前に管の肉厚を確認する方法として、一般的には計測位置と間隔を定め、超音波厚さ計で一点一点計測を行います。しかし、Boi-Runnerを用いることで、計測位置の間の肉厚を確認でき、減肉部を発見しやすくなります。これにより、肉盛溶接の前に重要な箇所を確実に確認できるようになります。



成分分析計の活用による溶接材料の選定
肉盛溶接補修を行う場合、通常は図面を基に母材を確認しますが、途中で仕様変更や補修が行われている場合、材質が異なることがあります。当社では、可搬型成分分析計を使用することで、現場で溶接箇所の成分分析を行い、適切な溶接材料や条件を選定します。さらに、当社の蓄積されたデータを活用することで、柔軟に対応できる体制を整えています。


AE法によるベアリング診断
本ベアリング診断技術は、Parker Kittiwake(旧Holroyd Instruments Ltd.)によって開発され、国内総代理店である鉄原実業株式会社により販売されています。この音波式診断装置は、機械損耗の初期段階を検出でき、国内の製紙業界、石油・化学業界、電力業界、製鉄業界など、回転機器を多く使用する分野でのメンテナンスに活用されています。
本装置は、0.25~70,000rpmの範囲で低回転からの診断が可能であり、当社の独立駆動系システムと組み合わせることで、より精度の高い診断が可能となります。


サーモグラフィカメラの施工への採用
硬化肉盛溶接においては、高い耐摩耗性を得るために、2~5%の炭素と15~30%程度のクロム(Cr)を含む高クロム鋳鉄系の溶接材料が一般的に使用されます。これらの材料は非常に割れやすいため、通常は接手溶接には使用されませんが、溶接割れを溶接範囲全体に分散させることで、溶接金属を破断させることなく溶着が可能になります。この割れをコントロールするためには、溶接時の温度管理が非常に重要です。当社では、サーモグラフィーを活用し、溶接中および余熱・後熱時の温度を視覚的に観察・記録することで、熱の影響をしっかりとコントロールしています。


社外発表技術
○ 2002年(平成14年)04月 | 「オープンアーク溶接法による連続鋳造ロールの耐摩耗性肉盛溶接」 月刊 溶接技術 8月号(技術解説) |
○ 2004年(平成16年)04月 | 「竪型ミルにみる肉盛溶接による再生技術」、月刊 溶接技術 4月号(技術トレンド) |
○ 2007年(平成19年)03月 | 「ラバーホイール試験による高クロム鋳鉄系肉盛金属の耐摩耗性評価」 表面技術協会 第115回講演大会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) |
○ 2007年(平成19年)08月 | 「ラバーホイール試験による高クロム鋳鉄系肉盛金属の耐摩耗性評価 その2 」 表面技術協会 第116回講演大会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) |
○ 2008年(平成20年)03月 | 「ラバーホイール試験による耐摩耗性評価への粉末吸湿の影響」 表面技術協会 第117回講演大会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) |
○ 2008年(平成20年)09月 | 「わが社の耐摩耗・耐食肉盛溶接技術」、月刊溶接技術4月号(特集 肉盛溶接最新事情) |
○ 2009年(平成21年)03月 | 「各種溶接金属の炭化物分散状態の分析と摩耗現象」 表面技術協会 第119回講演大会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) |
○ 2010年(平成22年)03月 | 「バイオマスボイラとその関連設備における耐摩耗・耐食策について」 第53回-2010年紙パルプ技術協会年次大会(富山県民会館、講演論文) |
○ 2011年(平成23年)04月 | 「企業における溶接人材育成システムの構築」 月刊 溶接技術 4月号 (特集 いま求められる技能伝承のあり方) |
○ 2011年(平成23年)03月 | 「高クロム鋳鉄系溶接材料の耐摩耗性評価 」 表面技術協会 第124回講演大会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) |
○ 2011年(平成23年)10月 | 「水冷壁パネルの耐摩耗・耐食肉盛溶接」 第54回-2011年紙パルプ技術協会年次大会(アスティ徳島、講演論文) |
○ 2011年(平成23年)10月 | 「竪型ミルの現地ミル内肉盛溶接による再生」 第54回-2011年紙パルプ技術協会年次大会(アスティ徳島、講演論文) |
○ 2012年(平成24年)09月 | 「肉盛溶接の現状と今後の課題」、月刊 溶接技術 9月号(Close Up) |
○ 2012年(平成24年)10月 | 「ボイラ水冷壁パネルにおける肉盛溶接部のいくつかの特徴」 第55回-2012年紙パルプ技術協会年次大会(旭川大雪アリーナ、講演論文) |
○ 2013年(平成25年)06月 | 「大型プラントの補修に用いる硬質肉盛溶接材料の仕上げ加工の自動化 」 第21回品質工学研究発表大会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) 大会実行委員長賞を受賞 |
○ 2013年(平成25年)09月 | 「ボイラ水冷壁の耐摩耗・耐食肉盛溶接技術」 月刊 溶接技術 9月号 (特集 肉盛溶接) |
○ 2013年(平成25年)11月 | 「ボイラ水冷壁における肉盛溶接部のいくつかの特徴」 紙パ技協誌 第67巻 11月号(総説、資料) |
○ 2014年(平成26年)02月 | 「大型プラントの肉盛補修における機械加工」 機械と工具 2月号 (日本工業大学との共同出稿、技術解説) |
○ 2014年(平成26年)04月 | 「大型プラントのメンテナンスに用いる硬質肉盛溶接材料の仕上加工の自動化」 品質工学vol.22 4月号 (日本工業大学との共同出稿、投稿論文) 2015年度 公益財団法人 精密測定技術振興財団 品質工学賞論文賞銀賞を受賞 |
○ 2014年(平成26年)06月 | 「大型プラントの硬化肉盛補修材料の機能評価法の開発」 第22回品質工学研究発表大会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) |
○ 2014年(平成26年)10月 | 「ボイラ水冷壁パネルの肉盛溶接施工法の開発と実機におけるその特性例」 第57回-2014年紙パルプ技術協会年次大会(盛岡市民文化ホール、講演論文) |
○ 2015年(平成27年)09月 | 「石炭火力発電用大型竪型ミルの補修に関する研究:第1報」 平成27年 砥粒加工学会学術講演会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) |
○ 2015年(平成27年)09月 | 「石炭火力発電用大型竪型ミルの補修に関する研究:第2報」 平成27年 砥粒加工学会学術講演会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) |
○ 2015年(平成27年)10月 | 「流動床ボイラに見られる高温侵食摩耗とその防止に関する2,3の試み」 第58回-2015年紙パルプ技術協会年次大会(新潟コンベンションセンター、講演論文) |
○ 2015年(平成27年)11月 | 「ボイラ水冷壁パネルの肉盛溶接施工法の開発と実機におけるその特性例」 紙パ技協誌 第69巻 11月号(総説、資料) |
○ 2016年(平成28年)09月 | 「石炭火力発電用パネル式ボイラ水冷壁管の補修のためのタンデム研削の開発」 平成28年 砥粒加工学会学術講演会 (日本工業大学との共同出稿、講演論文) |
○ 2016年(平成28年)10月 | 「各種ボイラにおける耐食・耐摩耗溶接材料の実機による特性評価試み」 第59回-2016年紙パルプ技術協会年次大会(サンメッセ香川、講演論文) |
○ 2016年(平成28年)10月 | 「流動床ボイラに見られる高温侵食摩耗とその防止に関する2,3の試み」 紙パ技協誌 第70巻 10月号(総説、資料) |
○ 2017年(平成29年)04月 | 「微粉炭焚きボイラ ウォールデスラガ廻り火炉壁管への耐摩耗肉盛溶接の適用」 火力原子力発電 Vol.68 No.4 (電源開発 株式会社との共同出稿、投稿論文) 平成30年度 火力原子力発電大会にて論文賞を受賞 |
○ 2017年(平成29年)05月 | 「各種ボイラ火炉壁管の耐食・耐浸食肉盛溶接の適用とその効果」 月刊溶接技術 5月号(技術レポート) |
○ 2017年(平成29年)09月 | 「高クロム鋳鉄系肉盛金属の耐摩耗性に及ぼす溶接速度の影響 」 表面技術協会 第136回講演大会 (日本工業大学との共同出稿) |
○ 2017年(平成29年)10月 | 「循環流動床ボイラ(CFB)を模擬した肉盛溶接部の高温耐侵食摩耗特性」 第60回-2017年紙パルプ技術協会年次大会(室蘭工業大学と共同出稿、大宮SC、講演論文) |
○ 2018年(平成30年)06月 | 「ボイラー火炉水冷壁の肉盛溶接による耐食・耐摩耗策」、ボイラ研究 409号(投稿論文) |
○ 2018年(平成30年)10月 | 「各種ボイラ火炉壁における肉盛溶接金属の高温耐侵食摩耗特性」 第61回-2018年紙パルプ技術協会年次大会(室蘭工業大学と共同出稿、大宮SC、講演論文) |
○ 2019年(令和元年)10月 | 「ウルトラファインバブルを活用した長尺管部材の肉盛溶接技術」 第62回-2019年紙パルプ技術協会年次大会(日本工業大学と共同出稿、仙台国際C、講演論文) |
○ 2019年(令和元年)12月 | 「ウルトラファインバブルを活用した長尺管部材の肉盛溶接技術」 第35回 研究会 未来志向形精密加工工具の開発に関する(FT)専門委員会 |
○ 2021年(令和3年)9月 | 「各種溶接金属における析出炭化物の状態と耐摩耗特性の関係」 表面技術協会 第144回講演大会 (日本工業大学との共同出稿) |
○ 2022年(令和4年)9月 | 「各種溶接材料における析出炭化物の状態観察」 表面技術協会 第146回講演大会 (日本工業大学との共同出稿) |
○ 2023年(令和5年)9月 | 「MT法によるダイヤモンド砥石のツルーイング完了判定に関する研究」 2023年度 精密工学会秋季大会学術講演会 (日本工業大学との共同出稿) |
○ 2024年(令和6年)3月 | 「発電用ボイラへの肉盛溶接施工事例」 第308回 化学機械溶接委員会 |
○ 2024年(令和6年)3月 | 「バイオマス発電や事業用火力発電ボイラの肉盛溶接技術」 2023年度 第4回 特殊材料溶接研究委員会 |
○ 2024年(令和6年)4月 | 「木質系バイオマス発電ボイラにおける溶接・溶射技術」 溶接学会 2024年度 春季全国大会シンポジウム |